このような状況の中、平成18年11月と平成19年1月に、千島列島を震源とするマグニチュード8程度の地震が発生した。しかし、この2回の地震では、津波警報の発表や避難勧告の発令にもかかわらず、住民の避難はいずれも低調に止まり、特に、平成19年1月の地震では前回の平成18年11月の地震よりも住民の避難率が著しく低下するなど、行政対応や住民の避難行動において非常に危惧すべき状況が確認された。
この2回の千島列島の地震では、地震の震源が比較的遠地であったこと、津波情報が地震情報より先に突然発表されたこと、オホーツク海沿岸に初めて津波警報が発表されたこと太平洋沿岸とオホーツク海沿岸で津波の予想高さが異なっていたこと、短期間に同様の地震が発生し津波警報や避難勧告の発令などにおいてほぼ同様の状況が生じたことなど多くの特徴が見られた。
本調査報告書は、このような特徴を有する千島列島の地震について、行政対応や住民の避難行動の実態とその意識的背景を詳細に把握するため、行政調査と住民調査を実施した結果を報告するものである。