(北海道根室市において、落石漁協と一緒に実践している漁船の津波避難に関する研究活動を紹介します)
2011年東北地方太平洋沖地震津波襲来時における落石漁協の漁民とその家族の対応
2011年東北地方太平洋沖地震津波の概要

2011年3月11日14時46分頃、東北地方太平洋沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が発生しました。この地震に伴い、超巨大津波が発生し、太平洋沿岸の広い範囲で甚大な被害が生じました。この際、地震発生直後に発表した津波警報を何度も更新し、太平洋沿岸の広い範囲に大津波警報が発表されることとなりました。

この津波襲来時における落石地区の津波警報・避難情報の概要は以下の通りです。

                                                                               
発表日時  発表内容
3月11日14:46東北地方太平洋沖地震が発生(落石地区は震度2を観測)
3月11日14:49 津波注意報発表(予想高さ:0.5m/予想到達時刻:15:30)
3月11日15:14津波警報発表(予想高さ:1m/予想到達時刻:15:30)
3月11日15:14根室市が避難勧告発令(3,318世帯8,620人)
3月11日15:30大津波警報発表(予想高さ:3m/予想到達時刻:既に到達と推測)
3月11日15:30根室市が避難指示発令(3,318世帯8,620人)
3月11日15:34根室花咲港に第1波(微弱)が到達
3月11日15:57根室花咲港に最大波(2.8m)が到達
3月11日16:09大津波警報発表(予想高さ:6m/予想到達時刻:到達を確認)
3月12日13:50大津波警報から津波警報へ移行(予想高さ:2m)
3月12日20:20津波警報から津波注意報へ移行(予想高さ:0.5m)
3月12日20:20根室市が避難指示を解除
3月13日17:58津波注意報解除

また、この津波襲来時において、落石漁協は以下のような対応をとりました。2010年のチリ地震津波襲来時同様、落石漁協は、津波警報の発表に伴い漁船に対して沖出しを指示するなど、漁民への適切な情報伝達を行っていました。
地震発生後、係留中の漁船に「沖合への避難指示」を行うとともに、岸壁付近の車両の移動を指示した
組合指導船は、15:00頃出港し、15:15頃には水深50mの安全海域にて待機していた
沖合の待機船に対して、大津波警報が継続中は、待機命令をだし続けた
組合指導船は、3/12の17:00頃帰港(大津波警報が津波警報に移行したため)
津波襲来危険時における漁民とその家族の対応
この津波襲来時における落石漁協に属する漁民の対応を把握するために、漁協関係者を対象にヒアリング調査を行いました。その結果の概要は以下の通りです。
津波警報発表時、港内には60隻の漁船と5隻の工事船が係留中だった
地震発生直後、気象庁から発表されたのは津波注意報であったが、組合員(漁民)は、自主的に漁船の沖出しを開始した
地震発生20〜30分後には、漁船55隻が水深50m以上の安全な海域に沖出しした
工事船3隻も漁船とともに沖出し、作業員に対して安全な高台へ避難することと指示した
※平成23年2月7日に、地域住民や港内現場作業員を対象とする津波防災講演会を開催し、沖出しルールを再確認していた
3月11日17:00頃 潮位変化が継続しているにもかかわらず、数隻が帰港
3月12日12:00頃 大津波警報継続中にもかかわらず、半数程度が帰港
3月12日13:50以降 大津波警報が津波警報に移行したため、全ての漁船が帰港
以上のような対応をとったため、落石地区における漁船被害は、地震発生時に港内に係留中であった漁船および工事船に被害はなく、上架中だった漁船7隻が津波によって落下し、船底を損傷しただけでした。根室市に隣接する浜中町では、この度の津波によって沈没流出10隻、破損115隻という甚大な漁船被害が生じていることを考えると、落石地区における漁船被害は、軽微なものであったといえるでしょう。
           
津波の襲来に備え、沖出しした漁船の様子上架してある漁船に津波が押し寄せる様子引き波によって海底が・・・
※一般住民の避難状況については、現在調査中です。結果がまとまり次第、随時更新していきます。