(群馬県桐生市において実践している急流河川の氾濫時における緊急一時避難場所の選定等に関する研究活動を紹介します)
確立した住民主導型の緊急避難体制の周知・継続を目的とした避難訓練の実施
避難訓練実施の背景 〜モデル地域での地域防災活動の課題〜
ここで紹介したような、ある地域をモデルケースとして専門家や地元自治体職員等が参画して、地域住民とともに行う実践(社会実験)は、防災に限らず様々な分野で全国的に行われています。しかし、これらの実践には、少なくとも二つの課題があると考えます。
全地域住民への周知に関する課題
これらの取り組みには、地域住民全員が参加するわけではありません。参加者の多くは地域コミュニティの役員であったり、防災に関心の高い人です。そのため、取り組みに参加していない住民(たとえば、防災に関心の低い方)に対して、取り組みで検討した内容を周知する必要があります。
取り組みの継続に関する課題
モデルケースとしての実践が終了してしまう、つまり、専門家や自治体職員からの支援がなくなってしまうと、地域住民だけでは活動が継続していない場合が少なくありません。本取組を通じて構築された地域独自の避難ルールを、地域のルールとして引き継いでいくためには、定期的な取り組みの継続は必要不可欠です。
避難訓練実施の目的
そこで、本取組では、懇談会を通じて構築した地域独自の避難ルールに則った避難訓練を実施しています。この訓練の目的は、構築した避難ルールの内容を確認するとともに、地域住民全員に参加を促すことで、『地域住民全員への周知』を図り、また定期的に開催することで、『取り組みの継続』を促すことを念頭においています。
避難訓練の流れ
避難訓練は、本番を想定して実施しなければ意味がありません。そのため、本訓練では、懇談会で検討した緊急避難の流れを全て確認します。
河川水位の確認と通報【河川水位確認担当者】

各町会であらかじめ決められた河川水位確認担当者は、インターネットや地上デジタル放送などを活用して河川の水位情報を確認します。

河川の水位があらかじめ決められた避難判断の基準水位に到達したと仮定して、町会長へ通報します。

行政区長へ報告【町会長】
基準の水位に達した旨の通報を受けた町会長は、行政区長へ河川水位の状況を報告します。
自主避難の判断と各町会への自主避難の呼びかけ【行政区長】

河川の水位があらかじめ決められた避難判断の基準水位に到達したと仮定して、区の役員や各町会の役員を中心に、各世帯へ避難を呼びかけます。

また、訓練では桐生市が避難勧告を発令し、広報車を用いて境野地区住民に避難を促します。

広報車による避難勧告の呼びかけ【行政】
避難訓練開始前には訓練実施を周知のために広報車が地域を巡回します。避難訓練開始後は広報車の巡回による避難勧告の呼びかけを行います。
早期避難場所へ避難【全住民】

自主避難勧告の発表を受けた住民は、隣近所で声をかけ合って、予め決めておいた早期避難場所に避難します。

なお、桐生市境野地区では早期避難場所であっても渡良瀬川や桐生川の洪水氾濫時には浸水する恐れがあるため、浸水しない階へ避難します。

  
緊急一次避難場所の確認【全住民】

避難訓練終了後、帰宅の途につく際、住民は自身の住まう町会の緊急一次避難場所を確認し、早期避難場所への避難が困難となった際の緊急時に駆け込む建物がどこにあるのかを実際に確かめるよう促した。

なお、水害時の適切な対応行動や早期避難場所、緊急一次避難場所を記載した水害避難リーフレットを避難訓練実施前に境野地区全世帯へ配布を終えています。

避難訓練実施効果の計測
避難訓練を実施したことの効果を計測するめに、訓練参加者を対象に簡単なアンケート調査を実施しました。
調査は訓練当日に会場で実施し、398名から回答を得ました。
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