(本研究室で独自に開発したシミュレーションシステムの概要や活用事例について紹介します)
住民の避難開始タイミング、行政の情報伝達開始タイミング、そして避難時の自動車利用状況の違いによる被害者数の軽減効果を検証した事例について紹介します
検討シナリオ
背景
洪水災害発生危険時において、住民の避難の開始が遅れたことにより被害が拡大した、または、行政からの避難情報等の発表が遅れたことにより被害が拡大した、という指摘は全国各地で洪水災害が発生する度に指摘されることです。また、避難時に自動車を利用してしまったために、交通渋滞に巻き込まれ避難が遅れたり、自動車の中で被災してしまうなどとったことも、洪水による被害を拡大する要因として危惧されます。
目的

ここでは、以下に示すシナリオ分析によって、

・住民の避難開始タイミングを早めることで、どの程度被害軽減効果があるのか【シナリオ(1)と(2)の比較】

・行政による情報伝達開始タイミングが遅れてしまうと、どの程度被害が拡大してしまうのか【シナリオ(1)と(3)の比較】

・避難手段として自動車を利用すると、どの程度被害が拡大してしまうのか【シナリオ(4)と(5)の比較】

の3点について検証した結果を例示します。

                                                                        
シナリオ
No.
情報の伝達タイミング
(破堤前)
避難の開始タイミング
(情報取得後)
車の利用内水の考慮総要救助者数
(1)4時間4時間しないしない19,974人
(2)4時間1時間しないしない1,056人
(3)2時間4時間しないしない79,069人
(4)4時間3時間しないする7,603人
(5)4時間3時間するする16,003人
アニメーション
       
(1) 情報を取得してから4時間後に避難を開始(2) 情報を取得してから1時間後に避難を開始
       
(3) 情報の発令が遅れた場合(破堤2時間前に情報伝達開始)(4) 車を使わずに避難した場合
   
(5) 車を使って避難した場合
計算条件
このシミュレーションは、以下の条件で計算を行っています。
                                                               
設定項目  設定値またはパターン
情報伝達屋外拡声器基本音声範囲:250m,聴取率:30%
タイミング発令直後から20分間隔で5回
広報車基本音声範囲:100m,聴取率:40%
タイミング発令直後に出動
マスメディア基本視聴率:60%
タイミング発令1時間後から30分間隔で3回
住民間電話の利用利用不可
避難行動避難率100%
避難先居住地から最も近い避難場所
避難手段徒歩(分速80m)または,
自動車による避難(時速40km)
洪水氾濫破堤シナリオ庄内川左岸14k地点 ※
内水の考慮あり(破堤6時間前から開始)
※ 2000年の東海豪雨と現状の治水施設の整備状況を参考に解析した内水氾濫と外水氾濫の解析結果を利用
【参考】氾濫シミュレーション結果に関するアニメーション
       
庄内川14k地点の破堤を想定した場合の浸水深変化内水を考慮した浸水にともなう道路の通行状況の変化