津波襲来時においては、『徒歩での避難』が原則といわれています。それは、地震によって家屋が倒壊したり、道路が破損したりして、自動車での移動が困難になってしまうことが予想されるためです。また、渋滞・交通事故等により、他の避難者へ悪影響が生じることも危惧されます。
しかし、3.11東日本大震災発生時において、自動車を利用して避難した方も少なくありません。そのために、渋滞が発生したり、自動車移動に被災したりしてしまった方もいた一方で、自動車で避難したことによって助かった方もいます。
・リアス式海岸地形の湾奥に位置し、山地に囲まれた地形
・沿岸部から最寄りの避難所まで直線で500m
・南北約40kmの半島で、平坦な土地
・南部の市街から最寄りの避難場所まで直線で約3km
・自動車利用率が0%〜15%では、被災者は発生していませんが、20%以上になると、自動車利用率の増加に伴い、犠牲者数が増大してしまうことが確認されました。
自動車利用率:15% | 自動車利用率:50% |
自動車利用率:75% |
・避難時に自動車を利用することで、犠牲者数は減少傾向にあることが確認されました。
・しかし、自動車利用率が70%を超えると、犠牲者数は微増傾向にあることも確認されました。
自動車利用率:15% | 自動車利用率:50% | 自動車利用率:75% |
次に、住民の避難開始タイミングと自動車利用率が、犠牲者の多寡に与える影響について検証しました。
ここで検証対象とした避難開始タイミングは、以下の3シナリオです。
・情報を取得したら、すぐに避難を開始
・情報を取得して、5分後に避難を開始
・情報を取得して、10分後に避難を開始
検証の結果を以下にまとめます。
まず、尾鷲市のように、避難場所まで比較的早く到達することのできる地域においては、津波避難時の自動車利用が犠牲者の増大に繋がってしまうため、「津波襲来危険時の自動車利用は原則禁止」の徹底を図るとともに、渋滞等の負の影響が生じない範囲内で、緊急車両や要援護者の避難支援等に自動車利用枠を有効活用する方策が考えられる。
また、LongBeachのように、避難場所までの距離が遠い地域においては、自動車利用が有効だが、避難誘導・渋滞対策や駐車場の容量を検討する必要がある。
尾鷲市 | LongBearch | |||
基礎データ | 住民 | 7,974世帯/15,520人 | 4,284世帯/9,027人 | |
建物 | 12,922棟 | 14,036棟 | ||
避難場所 | 26箇所(標高30m以上の高台各所) | 13箇所 | ||
屋外拡声器 | 42基 | 28基 | ||
広報車 | 3台 | 4台 | ||
避難所の駐車キャパシティ | 【指定避難場所】 各所30台(計780台) 【高台】 制限なし |
13箇所 計88,530台 | ||
避難行動 | 避難先 | 居住地から最も近い避難先 | 居住地から最も近い避難先 | |
避難手段 | 徒歩、または自動車 | 徒歩、または自動車 | 情報伝達 | 屋外拡声器 | 基本 | 音声範囲250m、聴取率30% | 音声範囲750m、聴取率30% |
タイミング | 地震発生3分後 | 地震発生5分後(5分おきに20回) | ||
広報車 | 基本 | 音声範囲100m、聴取率40% | 音声範囲250m、聴取率30% | |
タイミング | 地震発生3分後 | 地震発生5分後 | ||
マスメディア | 基本 | 聴取率60% | 聴取率60% | |
タイミング | 地震発生1分後 | 地震発生10分後(10分おきに10回) | ||
住民間 | 電話の利用 | 利用不可 | 利用不可 | |
津波 | 発生規模 | 中央防災会議想定 東南海・南海連動型(堤防が機能しない場合) ※20分で約6mの津波が襲来 |
NOAA想定 Cascadia Subduction Zone Mw9.1 Earthquake ※35分で約8mの津波が襲来 |