(ハザードマップの公表効果や住民の理解特性に関する研究成果と、新たなハザードマップについて紹介します)
住民の災害情報理解・受容特性をふまえたハザードマップの開発研究

ハザードマップで単に災害リスクを提示しただけでは、住民に誤解を招くおそれがあることは1.で示したとおりです。そこで、ここでは、ハザードマップが提供する災害情報の形態を変えることで、住民の災害情報理解・受容の促進効果をねらったハザードマップの開発・研究を行っています。

動くハザードマップ

当研究室では、シミュレータによって計算された災害情報の伝達状況や住民の避難状況、そして人的被害の発生状況などをアニメーション形式でわかりやすく表現した「動くハザードマップ」を開発しています。動くハザードマップを閲覧することで、避難のタイミングや災害情報の伝達タイミングなどが、災害によって発生する人的被害に与える影響を視覚的にわかりやすく把握することができます。また、動くハザードマップは、紙媒体のハザードマップで問題となっている住民の災害イメージの固定化を回避する効果が期待できます。

概略表現型マップ/『気づきマップ』

概略表現型マップは、マップ自体に掲載する情報を低減することで、自らが洪水時にとるべき対応行動を住民に自発的に考察されるような効果をねらったものです。

また、概略表現型マップは、浸水想定区域図が複数ある際、その最大浸水深のみを表示しようとすると高頻度で小規模な河川の氾濫の危険性が表示されなくなることが懸念されることから、各河川の氾濫による浸水リスクを考慮した地域の浸水リスクの特徴を概略的に示し、住民に自らが住まう地域の浸水特性の理解を促すとともに、小規模ならが高頻度で発生する浸水リスクも住民に提示できるものとなっています。

愛知県清須市で作成した気づきマップ
行動指南型マップ/『逃げどきマップ』

洪水災害時では、居住地の浸水特性と家屋構造から、自宅外への避難を要する住民と、自宅が高層階にある等の理由から、必ずしも自宅外への避難を要さない住民がいます。これらの住民に対して一律に自宅から避難所までの移動を促すことは、特に自宅外への避難を要さない住民に対しては、浸水が始まってからの避難といったかえって危険な行動を要求することにすらなりかねません。

そこで、ここでは、少なくとも有事においてとるべき対応行動を住民がとれるような効果を期待した「行動指南型洪水ハザードマップ」の開発・研究を行っています。

愛知県清須市で作成した逃げどきマップ
災害対応ガイドブック
『気づきマップ』や『逃げどきマップ』に記載された情報から、住民が災害発生危険時にとるべき行動、または平常時から災害に備えて対応しておくべき行動について、一冊のリーフレットにまとめた「災害対応ガイドブック」を作成しています。
新潟県三条市で作成した豪雨災害対応ガイドブック