(日本国外において実施した調査研究プロジェクトの概要を紹介します)
2008年7月26日〜8月18日にかけて、片田教授が津波防災に関わるJICA短期専門家として、中米3カ国(エルサルバドル、コスタリカ、ニカラグア)の現地調査や現地でのワークショップ、現地専門家とのディスカッション、大使館表敬訪問等を行いました。
エルサルバドル
現地踏査した地域は、海岸に接した低平湿地にある極貧住民集落である。集落の住居のすぐ裏は湿地の池であり、避難に適した高台は10km程度移動する必要があるようなところであった。住居のみならず学校も日常的な波浪や海砂移動の影響を受けるほど海岸線に接近した場所にあった。 当国では、2007年8月のペルー地震津波を契機に、技術機関SNETに海洋研究部を新設している。
写真1 エルサルバドルの海岸の様子(写真右の建物は校舎)  写真2 エルサルバドル 海岸の低平湿地にある集落
ニカラグア
1992年に津波災害を経験しており、住民の津波関心度は高い。しかし、その被災経験によって津波災害のイメージが固定化されている可能性があり、より一般的な津波教育の必要性がある。
ニカラグアでは、INETELという現地研究機関がある。そこでは、1996年から24時間で地震観測を続けており、早期警戒情報を8〜10分で住民コミュニティ無線を使って伝えるシステムを有する。また、津波予測技術が未発達ではあるものの、標高表示の津波ハザードマップを作成しており、津波リスクの伝えるための努力が図られていた。
写真3 津波ハザードマップ
コスタリカ
ニコヤ半島には多数の外国人観光客でにぎわう通年型のビーチリゾートが多く、住民のみならず観光客に対する防災対応が必要である。
コスタリカにはナショナル大学・コスタリカ大学があり、技術的に優れた地震・津波研究者がいる。また、防災機関であるCNEには、BOSAI(防災)の精神を十分に理解する担当者がおり、住民主体の防災を進めることが本質的に重要であるとの認識をもっている。今後は、研究機関と防災機関との相互の連携体制を充実化していくことが重要と考える。
写真4 コスタリカ大学にて意見交換会
その他、現地での様子
写真5 コスタリカ Tamarindo市での津波防災ワークショップの様子
(片田教授の横に立つ通訳の方は、博多弁を流暢に話すコスタリカ在住のFrankさん)
写真6 中米6カ国の防災専門家が集まる会議の様子     写真7 中米でもテレビ取材を受ける片田教授